COLUMN コラム

真昼の星のレゾナンス

3.9 2026
MON

 「今から来られますか?」。理学博士・佐治晴夫さんから連絡をいただいたのは、北海道美瑛町の美宙天文台で雨に降り込められて二日目の昼下がりだった。不意に雨が上がり、一気に晴れ渡った空。帰京を覚悟していた私にとって、それは“昼の星”から届いた奇跡の招待状だった。

 駆けつけると、サスペンダーに白い眼鏡をかけた佐治さんが望遠鏡を覗き込んでいた。「アルクトゥールスが、はっきり見えますね」と声を弾ませる。「見えないけれども、あるんですよ」――耳元で囁かれたその一言は、私が思い描いていた地球のイメージを音もなく裏返してくれた。

 青空に輝く星は、私には分裂を繰り返す活発な細胞のように見えた。森羅万象を抱きかかえる【時間】という名の、猛烈に美しい命を直視した気がした。
 時間は単なる物理量ではない。生の深奥で静かに拍動する【共鳴(レゾナンス)】なのだ。目に見える現象の背後に潜む【面影】。佐治さんの語る宇宙に触れるとき、私の【いま】は、宇宙がこぼした一粒の韻(ひびき)となって、深いリズムと確かに重なり合う。

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