COLUMN コラム

更新されるのは誰か

5.4 2026
MON

 鮫洲の運転免許センターでの手続きは、前回にましてさらに驚くほど効率的だった。番号で呼ばれ、矢印に従い、思考の余白もなく淡々と進む。自分が「運転するロボット」という規格品になったような感覚に陥る。

 だが、講習室で説かれたのは正反対の教訓だった。事故の多くは交差点で起きる、だからこそ他者を想像し、自ら考えよという。本来、交差点とは見知らぬ誰かと意志を交わす場所だ。現場では「考えなくても済む」ように私を導きながら、壇上からは「考えろ」と促す。その矛盾に、私は強い違和感を覚えた。

 無機質なシステムが提供する安全は、どこか借り物で手応えがない。真の安全とは、記号的な空間を出た先にあるはずだ。更新されたのは、私の免許証だけだろうか。それとも、この違和感を引き受けた私自身だろうか。せめて帰り道の交差点では、出会う他者の気配を一人の人間として、自分の頭で受け止めてみたいと思った。