COLUMN コラム

町中華の看板

5.11 2026
MON

 若い時は、何でも自分でやった。いっぱい失敗をした。それでしこたま怒られた。そもそも人と喋るのが苦手だった。何を喋っていいのかわからない。どんな顔をしていいのかわからない。どんな言葉を使えばいいのかわからないと、ないない尽くしだった。

ある時、お客さんが笑った。同僚が嬉しそうだった。家族が喜んだ。つられて私も笑った。前を見ても後ろを見ても横を見ても笑っている。

ああ、これだ。自分の笑顔は左右逆になった鏡でしか見る事は出来ないけれど、人の笑顔はリアルで見る事ができる。

「喜べば喜び事が喜んで、喜び集めて喜びに来る」

中国の昔の言葉のようだが、毎朝通勤途中の橋のたもとにかかっている古びた町中華の看板に大きく書かれている。この店主は店の宣伝もろくにしないで、なぜこの文章を選んだのだろう。ペンキもはげかかっているのに、ずっと変えないのはなぜだろう。毎朝毎朝見てニヤニヤしている。
本日5月11日に大和リースの社屋が移転し通勤路が変わったので、毎朝見る事ができなくなった。少し残念である。