COLUMN コラム
油断!
4.13
仏教の経典には、「国王が家臣に油を並々と注いだ鉢を運ばせ、一滴でも溢したら命を断つ」といった説や、比叡山延暦寺の「不滅の法灯」の灯を守るため、油を絶やさぬ修行からといった説もあるようだ。
中東情勢が慌ただしい。1970年の二度のオイルショックを思い出す。1975年、ある覆面作家が出版した『油断!』は、中東に極端に原油を依存している日本のエネルギー体制に警笛を鳴らした小説だ。実は本作は、その二年前に校了を終えていたのだが、あまりにも現実と似通っていて、社会に不安を与えすぎるとの事から、出版を延ばしたといわくつきだ。
しかも著者が名前を名乗らなかったのは、当時、現役の通産省官僚だったためで、のちにその名が知れる。『団塊の世代』という名言を残した堺屋太一さんだったというのは有名な話だ。
堺屋さんは官僚時代に1970年万博を提唱し、その実現に尽力された。プロデューサーとしては花と緑の博覧会や愛・地球博、そして2025年の大阪・関西万博だ。開幕を見ることなく2019年に亡くなられたのだが、閉幕まもない翌年に、【油】が【断】たれる──まさに『ホルムズ海峡』という現実の報を、どう聞かれるのだろうか。「事実は小説より奇なり」とはいえ、あまりの事に言葉がない。