COLUMN コラム

AI時代(後編) 

5.19 2026
TUE

 つまり、生成AIは「言葉になったもの」には強いが、「まだ言葉として定着していないもの」には弱いのかもしれない。そう考えると、もうひとつ気になるのが、「言葉にならないモノ」の表現だ。「拈華微笑」は言葉なく通じる一瞬、「不立文字」は文字に宿らない真理、「以心伝心」は心から心へ伝わるものを指す。こうした領域では、こちらがどんな言葉で問いを置くかによって、返ってくる応答が大きく変わる。つまり、プロンプト次第、ということなのだろう。


 音のないものを、文章で表現したほうがかえってわかりやすい例もある。漫画で静まり返った場面に使われる「シーン」という表現だ。実際に「シーン」という音が鳴っているわけではない。それでも、私たちはそこに沈黙を感じ取る。
どうやらこのあたり――音のないもの、言葉にならないもの、生成の一瞬――こそが、これから人間が本領を発揮する場所なのかもしれない。